【益世地区の伝統行事の案内 2 】

桑名 石取祭 毎年8月の第一日曜日とその前日の土曜日


~ 馬道組(第十組)の石取祭 ~

まえがき

 桑名石取祭は、全体を祭車町名単位で近隣地域毎に11組に分けております。益世地区では福江町、西矢田町が他地区の4町とで第九組として、また新矢田一丁目、馬道、西馬道、西榮町および上野町の5町で第十組として、通称馬道組とも言われております。石取祭の催行は、叩き出しから試楽はこの組単位でとり行われ、それぞれの組が特色ある運営をおこなっております。今回は、第十組「馬道組の石取祭」について、一般の方々を対象に見どころを中心に祭りの流れと主な内容などをご案内します。

見どころ1: 叩き出し(8月第一日曜日の前々日金曜日午後11時30分頃~8月第一日曜日の前日午前0時30分頃)

 馬道組の叩き出しは、国道421号線三ツ矢橋交差点を中心に行われます。交差点に年番町の祭車が、その北側に2台、西側に2台の祭車が並びます。8月第一日曜日の前々日金曜日午後11時頃から所定の場所に祭車が曳きこまれ整列します。これから午前0時の叩き出しまで太鼓、鉦を“ドン”とか“ガン”とでも鳴らせば大変なことになります。合図までじっと堪えて待ちます。叩き出しは午前0時の春日神社の神楽太鼓の合図で各町の太鼓・鉦が一斉に鳴らされるのですが、馬道組の場合には神楽太鼓の音は聞こえないため、提灯での合図を送ってくる「送り提灯」の合図で叩き出します。時間は当然午前0時を過ぎていきますが、提灯の合図のくるのを待ちます。提灯の合図の前に春日神社の方向から太鼓の音が聞こえてくることもあります。このような雰囲気の中で独特の緊張感があります。送り提灯の合図を交差点中央で受けた年番祭事長は提灯を高々と上げ、年番祭車を受け太鼓として一斉に鉦鼓が打ち鳴らされます。桑名の石取っ子にとっては待ちに待った瞬間です。約20分ほどその位置で叩き、馬道通り旧道を上野町へ向け巡行して、上野町到着後曳き別れを行い各町へ帰ります。

見どころ 2 : 試 楽 少年少女会の玉三稲荷神社渡祭(午後7時頃)

 8月第一日曜日の前日土曜日の試楽の祭車巡行は、上野町から始まります。午後6時30分上野町を出発して立坂神社での渡祭に向かいます。途中、栄町の玉三稲荷神社で少年少女の渡祭を行います。玉三稲荷神社の宮司による御祈祷もあり正式なものです。立坂神社および春日神社の渡祭では少年少女まで叩く時間はなく、この玉三稲荷神社の渡祭は、少年少女には大きな楽しみとなっております。

見どころ 3 :試 楽 立坂神社渡祭(午後9時~10時15分頃)

 祭車は馬道通り旧道を東進して益生踏切を渡り三ツ矢橋交差点を左折し、川龍角を右折して東進、国道一号線を左折して、立坂神社へ至ります。一番車が午後9時から各祭車15分間の渡祭を行います。どの町内も試楽のクライマックス、町毎の特徴あるパホーマンス、例年、渡祭の立坂神社前は、大変多くの人出で盛大な渡祭となっております。

見どころ 4 : 試 楽 益生踏切東曳き別れ(午後10時30分頃~ )

 渡祭後は、西進して新矢田通りから三ツ矢橋交差点を右折して、国道421号線益生踏切東手前に5町の祭車が勢ぞろいして午後10時30分頃から曳き別れを行います。この曳き別れは5台の祭車が太鼓を向き合わせて叩き、観衆も多く圧巻です。終了後は自町に帰りますが、この日は午前0時に鉦鼓は打ち止めとなります。

本 楽(8月第一日曜日)

 本楽にも叩き出しがあります。第一日曜日の午前2時に春日神社から引き継がれた「送り提灯」の合図で叩き出しとなります。馬道組の場合、場所は益生駅前です。夜中のことでもありますので、運営は概ね青年会および中老会が主体で実行されます。

各町は朝早くから総出で祭車の飾りつけ、荷駄への予備品、飲み物などの積み込みを忙しく取り進めます。5町の祭車は、三ツ矢橋交差点馬道側手前に集合し、 概ね12時 第十組祭事委員の先導で整列場所へと出発します。正副祭事長および自治会長は、紋付羽織袴の正装、他は町揃いの浴衣に羽織(女子は羽織は無し)で、役の人は馬上役提灯をもちます。第十組(馬道組)は、北市場整列の場合でも旧東海道を通って整列場所へ行くことを伝統としております。春日神社での渡祭順番は、事前に春日神社の御神前での「御籤占い式」(籤引き)で決められています。

桑名石取祭唄

桑名石取祭は、庶民のまつりとして親しみ深い唄が歌い継がれてきております。語句、内容の歌い順などに多様なところはありますが、その一例を紹介します。

めでた めでたの 若松さまよ
枝も栄えて 葉もしげる
アアデンヤ デンヤ

お勝さんは うちにか
かにがももはさんで はさみちぎって
ほったった ほったった 

町屋川原の ナデシコの花
昼は しおれて 夜は ひらく
アアデンヤ デンヤ

桑名の石取まつりは
鉦や太鼓で ゴンチキチン
たたくときは よかったが
あとでお手々が豆だらけ

町々の宿では笹をたてて しめ張って
飲んだり 食ったり
とんだり はねたり
山形に ちょいとつけたる十二張

子供は浮かれて
お勝さんは うちにか

かにがももはさんで
はさみちぎって ほったった
ほたたの ほたたの ほったった 

(市川 景範 記)